[現役バーテンダーが分かりやすく解説]ウイスキーの簡単な考え方と、ウイスキー作りの基礎知識について

本記事は、初心者の方に向け、ウイスキーをざっくり理解して頂くことを目的としています。ウイスキーとはどんなお酒で、その特徴とは何なのか、最初はやはりイメージを掴むことが大事と思います。ここでは長々と定義等の説明はせず、少々の誤解には目をつむり、簡潔にイメージをお伝えすることを優先することにします。

まず、ウイスキーを簡単に言うと、「ビールを蒸留し、木樽で熟成させたお酒」です(ちなみにワインを蒸留したものはブランデーです)。もともとはビールでありますから、原料は大麦などの穀物です。

特徴的なのは何と言っても、木樽での長期熟成です。驚く方も多いですが、実はウイスキーはもともとは透明なお酒なんです。蒸留したての透明なお酒を”ニューメイク”と呼びますが、このウイスキーの赤ちゃんを樽で寝かせることで、樽の色や風味が赤ちゃんに移っていき、皆さんご存知の琥珀色で香り高いウイスキーへと成長していくのです。

さて、ウイスキーは味の幅がとても広いお酒ですが、基本的には「2×2」の計4パターンからなる味わいと思って頂いて大丈夫です。具体的に言うと、「(ピートを焚いているか、いないか)×(バーボン樽熟成か、シェリー樽熟成か)」の2×2=4パターンです。(※ピートや樽の説明は下ページで行っています。)

この2つの情報さえ押さえれば、ウイスキーは飲まずともその味わいが大雑把にですが予測可能になります。なぜなら、この2つがウイスキーの香味を決定づける要素だからです。トップの画像はそれを前提に香味を4象限に分け、代表的なウイスキーを記載しております。これは当店でも実際に使用しており、自分の好きなウイスキーの特徴を掴むうえでも使いやすいと思います。当ブログでは、この4象限の内どこに位置するかでウイスキーを検索できますので、是非ご活用ください。

ここまでウイスキーのイメージを簡単にお伝えしてきましたが、どうでしょうか?まあ知識としては「ビールを蒸留したお酒で樽熟成が重要で、ざっくり4つの味わいに分類されるんだな」ぐらいでも十分かと思います。

ですがせっかくウイスキーに興味を持って頂いたのなら、もう少しだけ勉強するのも悪くないでしょう。以下からは、どのようにウイスキーは作られていくのか、その簡略な基礎知識をお話ししたいと思います。ウイスキー作りの工程は、大きく分けて以下の5つになります。

★印が付いている工程、つまり1.製麦と4.熟成が、上記で述べた通り、ウイスキーの香味を大きく左右します。以下、それぞれの工程について簡単に記します。

1.製麦

「お酒って本当に種類多いよな」と思ったことはないでしょうか?そもそも、アルコールの元は糖分です。なので、糖分がないとアルコールは産まれません。世界最古のお酒はワインと言われていますが、これはただ単に「ブドウがもともと糖分を含んでいるから」に他なりません(放っといても勝手にできるのです)。

ウイスキーは穀物から作られるので、ワインと違って、糖分を創り出すことから始めなければなりません。ここでは詳細なプロセスは省きますが、まあザックリ言うと一手間かけてるのです。そこで最も大事な手間が、ピートを使って麦を乾燥させる、という工程です。

ピートとは、上記画像の黒い物体であり、日本語では”泥炭”と呼びます。これは植物や木が堆積し炭化したものであり、簡単に言うと「石炭の出来損ない」です。これを燃やして麦を乾燥させる、つまり燻製させることで、ピートの香りが麦に移り、よく言われるような薬っぽい独特な香りを持つお酒が生まれるのです。このピートの香りをどれぐらい麦に移すか、少しだけ香るようにするのか、はたまた全くピートを使わないのか、がそのウイスキーの最初の分かれ道となります。これを当サイトでは、ウイスキー分類画像の縦軸(ノンピート→ヘビーピート)で表します。

なお、どれぐらいピートが強いのかを測る目安の数値としてフェノール値(ppm)というものがあります。一般的には数値が高ければ高いほどピーティーと言われますが、実際にはそのピートの産地なども関係するため、あくまで参考値となります。

2.発酵

1で出来上がった麦を糖化して発酵させる、つまりビールが出来上がる工程です。美味しいウイスキーを作るには、当然美味しいビールが必要になるのです。上でアルコールの元は糖分と書きましたが、糖分をアルコールに変えてくれるのは「酵母」の働きです(酵母は糖分を食べ、糞としてアルコールを排出するのです)。そのため酵母は世の中すべてのお酒造りに欠かせない微生物であり、多くの酒類メーカーは酵母の研究に力を入れています。下の画像は、発酵槽という容器であり、ここに酵母を投入することで、アルコール7~8%のビールが出来上がります。

1~2までの工程で、一例として非常に分かりやすいのが、映画「君の名は。」で出てくる口噛み酒です。主人公の三葉がお米を咀嚼して吐き出し、放置しておくとお酒になる、というものですが、これはお米の持つデンプンを唾液により糖化し、野生に存在する酵母がこれをアルコールに変えた、というものです。もちろん実際の現場では細心の注意を払って糖化や発酵の作業が行われていますが、原理としてはこのようなプロセスを辿っているのです。

3.蒸留

2で作られたビールを蒸留し、純度の高いアルコールを取り出します。腐らないお酒が誕生する瞬間です。バーでは「何年も放置していたウイスキーって飲んでも大丈夫ですか?」とよく聞かれますが、飲んでも全く問題ありません。開封してても大丈夫です。しかし、もちろん品質には影響しますし、保管は冷暗所で行うようにしましょう。少し話はそれますが、ウイスキーは開けてすぐが一番美味しいという訳ではなく、むしろ数か月経って香味が開いていくことも珍しくありません。なので買って飲んでみたウイスキーが最初いまいちと感じても、時間を置いて再度飲んでみたら感想が変わることも大いに有りえます。

本題に戻りますが、ウイスキーを作る施設は「蒸留所(Distillery)」、上の画像の蒸留機(器)は「ポットスチル」と呼ばれます。蒸留はビールの成分をどれだけ取り出すか、つまり簡単に言うと「重厚な味わいか軽快な味わいか」、これを調整する工程になります。多くの蒸留所では、基本的に蒸留は2回行われていますが、スコットランドのローランド地方やアイルランドで作られるウイスキーなど3回行うところもあります。蒸留はアルコールの純度を高めていくものなので、蒸留回数が多ければ、よりピュアで軽快なニューメイクが出来上がります。あまり種類は多くないですが、「3回蒸留だったら軽い酒質なんだな」と思って頂ければ大丈夫です。

4.熟成

ウイスキーの香味を最も左右するのが、この熟成という工程です。一般的に、ウイスキーの香味の6~7割を決定づけると言われています。ウイスキーの赤ちゃんであるニューメイクが大人に成長する過程ですので、その環境(樽や保管場所)が大事なのは言うまでもないでしょう。ここで非常に重要な点は、「多くのウイスキーは新しい樽を熟成に使用することは少なく、何か別のお酒を熟成させていた樽を引き取って二次利用している」というところです。なので、ウイスキーを入れる前、その樽が何のお酒に使われていたか、がポイントになります。

熟成樽として最もポピュラーなのは、「バーボン樽」と「シェリー樽」の2つです。バーボンはアメリカのウイスキーで、シェリーはワインの仲間のお酒です。が、シェリー樽については近年のウイスキーの人気により、供給不足の傾向にあります(ウイスキーの需要はあるが、シェリーそのものの需要が伸びていないのです)。なので近年はそれを埋めるように、様々な種類の樽が熟成に使われるようになっています(ポートワイン、ブランデー、ソーテルヌ、ラム、新樽、etc…)。

がしかし、そのような多様化の中にあっても、大きく「バニラ香」と「フルーツ香」に分類できると言っていいでしょう。文字通り「バニラ香」はバニラの風味が、「フルーツ香」はフルーツの風味が、それぞれ熟成樽によってウイスキーにもたらされます。上の画像では、よく熟成に使われている樽がどちらに属するかを表していますが、当然シェリー酒にも甘口辛口などありますので、細かいことは別の記事で詳しく解説したいと思います。バニラの特徴が強いのかフルーツの特徴が強いのか、これを当サイトでは、ウイスキー分類画像の横軸(バニラ→フルーツ)で表しています。

5.ブレンド

料理で例えれば、製麦~熟成までは素材の仕込み、ブレンドは調理と言っていいでしょう。ウイスキーの仕上げの工程であり、経験豊富なブレンダーが腕を振るいます。多くの方が最初勘違いしてしまうところですが、たとえシングルモルト(大麦だけを原料に単一の蒸留所の原酒だけを使用したウイスキー)であっても、ブレンドは行っています。私も含め最初のころは皆、樽でウイスキーを12年なら12年熟成させ、そのままボトルに詰めて出荷しているのだろう、と思ってしまうものです。

しかし、それは正しくありません。何故なら、樽の一つ一つにも品質の良し悪しがあり、そのようなダイレクトなボトル詰めだと、ボトル毎に品質が全く異なってしまうためです。なので蒸留所は熟成が完了した原酒を選び、それらをブレンドして過去の商品と同じ方向性の味になるよう努力しているのです。ウイスキーによくある”○○12年”という表記は、このブレンドに使用した原酒の最低熟成年数を表しており、実際にはそれ以上の年数を熟成させている原酒が含まれていることも多いのです(例えば12年の原酒と18年の原酒をブレンドした場合、ボトルに年数を表記する場合には”12年”と記載しなければなりません)。

また、ここも勘違いしやすいところですが、同じ蒸留所の12年ものと18年ものは、もう6年熟成を重ねた、という単純なものではありません。蒸留所は膨大な数の原酒を熟成させており、上でも触れたとおり、その樽の種類は多岐に渡ります。そのため、12年ものと18年ものとでは、選んでいる原酒が全く違う種類の樽であることも多いのです。具体的には、12年ものはバーボン樽熟成であるのに対し、18年ものはシェリー樽熟成、という具合です。また、バーボン樽70%/シェリー樽30%のようなブレンドもよくあります。同じ蒸留所のウイスキーなのに熟成年数が違うだけで大きく味わいが異なることに驚かれる方も多いですが、それはこのブレンドという工程によるものなのです。

蒸留所は、膨大な種類の原酒を長期間に渡り熟成しています。当然私たちが今飲んでいるウイスキーは、長いものだと数十年前に仕込まれていたものになります。凄いことですよね。そのため蒸留所の仕事は、「未来にプレゼントを残すこと」とも言われています。先人たちの贈り物に感謝したいですね。

さて、ここまでウイスキー作りの基礎知識を書いてきましたが、何となくイメージは掴めたでしょうか?最後に少し混乱させてしまうかもしれませんが、これまで述べたものはスコットランドや日本のウイスキーの製法であり、アメリカのバーボンには当てはまりません(笑)。スコッチや日本のウイスキーは原料大麦がメインですが、バーボンはトウモロコシです。ピートもほとんど焚かれませんし、熟成樽は法律上、新樽しか許されていません。蒸留も含め、何から何まで違うのです!(笑)なので、バーボンは別と思っておいてください。しかし近年はスコッチ式のウイスキーのほうが人気なので、アメリカでもスコッチ式ウイスキーを作ることも増えてきています。

少し長くなってしまいましたが、一番大事なのは「ウイスキーを愉しむこと」です。ウイスキーは”acquired taste(後天的味覚)”と言って、慣れるのに時間がかかるお酒です。がしかし、慣れてしまえば、こんなにも愉しいお酒はありません。当ブログが、皆様がウイスキーを愉しむにあたって少しでもお手伝いになれば幸いです。

それでは、以上とさせて頂きます。ありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です